『時代が創ったBCLブーム』

2010-04-02
BCLとは、Broadcasting Listeningの略語で、世界中の短波を聴取すること。日本では1970年代に一大ブームが沸き起こり、ソニーやナショナル、東芝など主要メーカーから高性能短波ラジオがこぞって販売されました。欧米諸国ではBCLはマニアな大人の趣味でしたが、日本で圧倒的な支持を得たのは、中高生を中心とした若者世代。当時を代表するユースカルチャーの一つでした。



憧れた海外との距離感を
縮めたラジオ短波の役割
若者世代を中心とした盛り上がりの背景には、やはり海外への強い憧れがあったことが挙げられます。貿易や為替の発達に伴い、1964年に解禁された海外渡航の自由化は、島国ニッポンにとって大きな出来事。これにより、アメリカをはじめとする"海の向こう"へのロマンを抱く若者が増えたものです。海外のラジオから得られる情報は真新しいものばかり。とくに洋楽のヒットチャートをリアルタイミングで聞けるなど、音楽は非常にブーム隆盛の大きな要素を占めていました。海の向こうで何が起こっていて、何が流行っていたのかが知れるBCLは、家にいながら海外への距離を縮めた革新的なメディアでした。



カード収集ブーム全盛に
あってベリカードの価値

もう一つ、若者を中心とした盛り上がりにベリカードの存在は欠かせません。これは聴取者が各放送局に受信報告書を送付した際にリスナーに対するサービスの一環として発行され、送られる受信確認のカードのこと。そのデザインは写真やイラストなど様々で、各局趣向を凝らしたものばかり。とくに海外のデザインに触れられるのは貴重な機会。また折しも当時はカード収集ブームで、人がもっていないカードを所有していることに価値があり、鼻を高くしたものです。



当たり前の家庭環境にみる
ラジオの深夜放送ブーム

そして、ラジオそのものが若者の文化であったことは忘れてはなりません。当時は今と違い、まだテレビが一家に一台が当たり前。自分の部屋にテレビがない若者が、夜な夜なラジオに向かって楽しむといった行動パターンは、ライフスタイルとして定着していました。そのなかで、先進性の高い情報を得たいというニーズに応えた各短波放送は、旬なコンテンツとして自然に受け入れられました。魅惑的なオーディオやゲーム機器が登場した'80年代の手前、というのもラジオが大きく発展した理由の一つ。そうした時代性が合致して、カルチャーに成りえたものです。ソニーICF-6800(上記画像)やナショナルRJX-4800DといったBCLラジオは、安価なラジオが普及する当時において、定価がそれぞれ79,800円、99,800円と、憧れの機種としてもてはやされました。こうしたことから、とくにBCLは機械マニアからも支持を得たハイエンドなカルチャーであったことはいうに及びません。



ゆとりを得た団塊世代による
BCL熱が再燃し始めた今日

今また団塊を中心とした世代が、BCLを楽しむといった事象が起こっています。インターネットで海外放送が視聴できる時代ではありますが、ゆとりを得た人たちが懐かしの機械と対峙してツマミを回し、チャンネルを合わせることで、当時へのタイムスリップを楽しんでいるようです。前述した古いBCLラジオも今ではアンティークとして高価格で取引されています。ちなみに現行品ではソニーのICF-SW07などが人気のよう。青春時代に思いを馳せながら、趣味を再開するのも、面白いかもしれませんね。


文・小澤匡行


SONY ICF-SW07
http://www.sony.jp/radio/products/ICF-SW07/